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  男と女の事件簿

大人の女に「トラウマ」 身勝手なロリコン模倣犯
【S市発】□月■日、道警は会員制交流サイト(SNS)で知り合った10代前半の少女を自宅に連れ込んだとして、S市内の会社員高橋隆一(35)をわいせつ目的の誘拐容疑で逮捕した。調べによると、同容疑者はツイッター上に「家出したい」と書き込んだ少女に「泊めてあげる」と誘い出し、自宅マンションに2日間、監禁した疑い。少女は容疑者が外出中に自宅に戻り、家族が通報した。

 どんな人間でも、一つや二つ、心に傷を持つ。いわゆるトラウマである。大人はそれを自制心や理性で克服するが、それを抑えきれない人間もいる。時に、それが屈折した形で表に出るから厄介だ。
 隆一もトラウマを抱えていた。大学卒業後、家電量販チェーンに就職。人当たりの良さと堅実な仕事ぶりで、30歳の若さで店長代理に就任。幹部候補生と嘱望されていた。しかし、それはあくまで「表の顔」だった。
 隆一のトラウマは「女」だった。大学時代、初めて付き合った同年代のOL洋子は突然、去っていった。別れの理由を問うと、メールの返事は明け透けだった。「女はやっぱ子宮なのよ。それを今のカレシに教えてもらったの。あなたの時は演技だった」。つまり、隆一では女の悦びを味わえなかったということだ。
 確かに洋子はバージンではなかった。でも、童貞だった隆一が必死になって全身を舐め回すと、体を痙攣させて上り詰めた。「あれは演技だったのか」。男と女の深い溝をいやと言うほど知らされた。
 以来、隆一は多くの女と関係を持った。しかし、その度に不完全燃焼だった。女たちは行為の最中、「イク、イク」と喘いだが、それがすべて演技に見える。そう、大人の女へのトラウマだ。結局、隆一が行き着いた先は、誰の手垢のついていない少女だった。


 といっても、若い娘と知りあう機会はない。悶々とする日々が続いた。その頃、テレビや新聞では神奈川県座間市で発覚した連続殺人事件が盛んに報じられていた。被害者はSNSを通じて、犯人に誘い出されていた。中には普通なら知りあうこともない遠距離の女子高校生も含まれていた。
「こんなに簡単なのか」。そんな興味から隆一も軽い気持ちでSNSを利用してみた。道内限定の掲示板にも多くのメッセージが載っていた。「学校でいじめられています。自殺したい」という深刻な訴えから、「こちら中学生。援助、お願いしまーす」といった買春を持ちかけるものまで、内容はさまざま。そんな中、目を引いたのは中学2年生という少女の文面だ。「おかあさんの再婚相手に息が詰まる。家出したい」。隆一は返信を送ってみた。「そんなにいやなら、家を早く出ればいい」。
 それがきっかけでメールのやりとりが始まった。少女は警戒心が解けたのか、写真を送ってきた。あどけなさが残るが、ショートカットが似合う美少女だ。札幌の隣り町の中学校に通っているという。「ヨシミ」と名乗った。
「今度の金曜日、コンサートを見に札幌に行きます。会ってくれますか」
「いいよ。一緒に晩御飯でも食べよう」
 約束の日の夕方、駅で待ち合わせ、ファミレスで夕食をとった。
「まだ、家出したいの?」
 そう聞くと、少女はうなづいた。聞くと、母親の再婚相手が口うるさくて、生理的に合わないという。「だから、きょうと明日、友達の家に泊まると言って来たの。泊めてくれますか」。思いもかけぬ急展開。2人は隆一のマンションに向かった。


 少女はシャワーを浴び、用意してきたパジャマに着替えた。薄着になると、体は大人びていることが分かる。若い男女だ。夜が更ければ更けるほどぎこちない空気が流れ、少女はベッド、隆一はソファに横になった。異性がそばにいると思えば、寝付けない。夜中、隆一はベッドに近づくと、少女の方から抱きついてきた。体が震えている。
「怖いの」
 そうささやく口元に唇を近づけた。少女は舌を絡めあうことも知らなかった。ゆっくり時間を掛けて、キスの仕方を教えた。胸をもむと、初めは恥ずかしがったが、小さな乳首がしこり始めると、甘い吐息を漏らした。
 我慢できなくなった隆一が下着に手を掛けると、少女は「ダメ」と拒んだ。「焦ることはない。明日もある」。その夜はそれだけで終わった。
 翌朝、少女は「牛乳が飲みたい」と言い出した。隆一は少女に「一緒に行かないか」と誘ったが、「まだ、眠い」と断られ、一人で出かけた。コンビニで牛乳とタバコ、そして今夜に備えてコンドームも買った。
 だが、自室に戻ると、少女は消えていた。そして置き手紙。「ごめんなさい。Hには興味あったけど、やっぱ怖い。帰ります」。思春期の揺れる気持ちがつづられていた。
 隆一は「ここに泊まったことは内緒だよ」とメールを打ったが、返事はない。刑事が隆一の前に現れたのは、3日後だった。

(実際にあった事件をヒントにした創作です)