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新・医療最前線

〈アレルギー性鼻炎など・耳鼻咽喉科編〉

 3月号からスタートした新連載「医療ナビ」。
 3回目は耳と鼻、のどの異常を取り上げ、耳鼻咽喉科が扱う主だった病気について、専門医の意見を交え、わかりやすく解説する。


はじめに

 人のからだの症状を大まかに分類すると、27項目に分けられる(図)。
 3回目はその中でD耳の異常とE鼻の異常、Fのどの異常を取り上げ、耳鼻咽喉科が扱う主だった病気の症状と診断、治療について専門医の意見を参考に、わかりやすく紹介する。
 ただ病気の治療は専門医による診断が不可欠なのは言うまでもない。治療の目安として活用していただきたい。


上顎がん


▲人のからだの症状(図)
 上顎がんは、慢性副鼻腔炎が長期間、持続することが原因の一つとされている。そのほか、ヒト乳頭腫ウィルスが起因することもある。がんが進展する部位によって症状が異なり、@前方(外側)進展では頬が腫れる、A内方(内側)進展では鼻血、B上方進展は目が腫れる、C下方進展は歯肉が腫れる、D後方(奥側)進展はしびれ(開口障害)と、多彩だ。ステージはI〜WA、WBの5段階で、WAまでは手術が可能だ。治療の進歩により、手術ができないWBにおいてもカテーテルで大量の抗がん剤を注入し、放射線治療を併用した「超選択的動注(動脈注射)療法」が行われている。これは副作用が少なく、審美性もよい治療として注目されている。外科的な手術では上顎部分切除や全摘が行われる。


急性咽頭炎

 細菌やウィルスにより咽頭の部分に急性の炎症が起きる急性咽頭炎は、喉が痛くなり、熱が出るなどの症状を呈する。治療は消炎鎮痛剤やうがい。「病気としては重い病気ではないが、手洗いや加湿などに注意されたい」と北大耳鼻咽喉科の福田諭教授。


急性扁桃炎

 こちらも急性咽頭炎と同様、細菌やウィルスによる感染で扁桃が炎症をきたす病気。喉が痛い、発熱などの症状がある。扁桃が赤く腫れるため、視診で診断がつく。治療も急性咽頭炎と同じ消炎鎮痛剤やうがいだが、「進行すると扁桃周囲炎(扁桃周囲膿瘍)になり、扁桃腺切除手術を行わなればならない場合もあるので、早目の受診が必要」(北大耳鼻咽喉科・福田諭教授)


急性中耳炎

 急性中耳炎は「耳が風邪をひく」と言われ、2歳までの子どもは大人のおよそ半分の免疫力しか持たないため、その8割が一度は罹患すると言われている。免疫力が付かない子どもの場合には中耳炎をくり返したり、薬剤における耐性菌(肺炎球菌やインフルエンザ菌など)が増えているため、中耳炎が治りにくかったりするケースも増えている。
 鼻と耳はつながっており、鼻から侵入した菌が耳管を通って中耳腔で炎症を起こすのが中耳炎である。症状は耳が痛い、発熱、耳だれなど。治療は飲み薬(抗菌薬)を使う。


メニエール病

 メニエール病の主症状は難聴と耳鳴り、耳閉塞感といった聴こえの症状とめまいの症状が同じ時期に起こり繰り返す。蝸牛や球形嚢の内リンパ腔に水がたまり腫れ(内リンパ水腫)、蝸牛に障害が生じて前庭感覚器に異常が起こることにより、聴覚(難聴や耳鳴りなど)・前庭障害(回転性めまい発作)が生じるものだ。
 治療は内リンパ腔の腫れを抑える「浸透圧利尿剤」による薬物治療を行う。場合によっては手術(内リンパ嚢開放術)も行われている。
「薬物治療や手術で症状は抑えることはできるが、完治する治療法はまだ確立されていない」(札幌医大耳鼻咽喉科・氷見徹夫教授)


慢性副鼻腔炎(蓄膿症)

 慢性副鼻腔炎(蓄膿症)は細菌やウィルスによる感染が原因で副鼻腔が炎症をきたす病気。症状は鼻水と鼻づまり。鼻水が喉に落ち、不快感を伴う。
 かつては上顎部に感染するものが多かったが、近年は目と目の間にある篩骨洞に感染し、喘息などを併発する好酸球性副鼻腔炎が増えている。治療については炎症を抑える薬物治療を行い、薬物治療で改善が見られない場合には、手術(内視鏡下副鼻腔手術)も行われている。
「市販薬の点鼻薬を長く使用していると鼻づまりがひどくなる場合もあるので、そうなる前に専門医に診ていただきたい」(旭川医大耳鼻咽喉科・原渕保明教授)


喉頭がん がんの中で最も喫煙と密接な関係があり 喉頭がん罹患者の90%が男性


▲北海道大学
耳鼻咽喉科
福田 諭教授
――喉頭がんの原因は。
 原因は喫煙、飲酒、口腔内不衛生などがあげられます。なかでも喫煙が最も高く、がんの中で喉頭がんが最も喫煙との関連が強い。また喉頭がんは男性に多く、罹患者の90%が男性です。
――喉頭がんの症状は。
 喉頭がんは発生する部位によって@声門がん、A声門上がん、B声門下がんの3つに分類されます。発症は喉頭がんの中で@声門がんがおよそ4分の3を占め、A声門上がんが4分の1、B声門下がんは比較的まれです。
 症状ですが、@声門がんは声帯のがんですから、声がかすれます。A声門上がんは嚥下時に違和感やつまり感がありますが、症状が出にくい。声門上はリンパ流が豊富なので頸部リンパ節転移が起きやすく、予後がよくない。つまり、A声門上がんは症状がなく、気が付いたときには進行している場合が多い。
――治療は。
 治療は初期のステージTでは放射線治療やレーザー手術を行います。ステージUでは放射線治療と抗がん剤治療の併用ないしは、経口(口の中)的喉頭切除術という手術を行います。ステージVもUと同様です。ステージWの場合は手術でも声帯を全部切除する喉頭全摘が行われることが多いです。
 全国がんセンター協議会がまとめたデータでは5年生存率がステージTで93%、Uが85%、Vが63%、Wが44%。喉頭がんは他のがんと比べ予後が比較的よい。早期発見・早期治療が大切で、声がかすれた方は耳鼻科専門医に診てもらうことをお勧めします。


難 聴 加齢で内耳の有毛細胞が減少 高い周波数の音が聴こえにくくなる


▲札幌医科大学
耳鼻咽喉科
氷見 徹夫教授
――高齢者の難聴とは。
 高齢者の難聴は周波数の高い音から聴こえが悪くなります。言葉には母音(あいうえお)と子音から成り立っていますが、高齢になると低い周波数の母音(500〜1000Hz)は聴こえますが、高い周波数の子音は聴こえにくくなります。お母さんの「おかぁさん」が「おぁぁぁん」に聴こえてしまう。
――難聴のメカニズムは。
 内耳にある蝸牛はかたつむりの形状をしていて、先ほど述べた音の周波数の高低を分析する働きがあります。蝸牛の入り口の太い部分は高い周波数、逆に奥の細い部分は低い周波数を感じとります。蝸牛の入り口から奥に向かってピアノの鍵盤のように聴覚神経が並んでいて、周波数の刺激が神経を通って脳に伝えられ、聴こえるわけです。
 加齢につれて高い周波数を感じる蝸牛の入り口の細胞の数が減ってきます。高齢になると周波数の高い音から聴こえなくなるのはそのためです。蝸牛の細胞には毛が生えていて(有毛細胞)、鼓膜の振動により、その毛が動くと電気信号に変換されます。有毛細胞が減少するのが高齢者の難聴です。
 突発性難聴は、原因が特定できない難聴をさします。脳梗塞や脳腫瘍、メニエール病など基礎疾患が別にある場合もあって複雑多岐にわたります。急に聴こえが悪くなる場合には、脳の検査を受けられた方がよいでしょう。
――難聴の治療は。
 高齢者の難聴は補聴器で、薬物治療はありません。聾学校で使用されている補聴器だと間違いはありません。


アレルギー性鼻炎 遺伝的体質と環境因子で生体防御機能が過剰に働くのがアレルギー性鼻炎


▲旭川医科大学
耳鼻咽喉科
原渕 保明教授
――アレルギー性鼻炎とは。
 まず鼻には外界にあるハウスダストや花粉のような有害な物質がからだの中に入ってこないように、鼻の中で免疫を起こして排除する働きがあります。その免疫機能が症状になって現れたのがアレルギー性鼻炎。人の生体防御機能の1つが過剰に働くのがアレルギー性鼻炎なんです。
――アレルギー性鼻炎の原因となるアレルゲンはどういうものがあるのですか。
 アレルギーには通年性と季節性の2種類がありますが、通年性ではハウスダストやダニ、ペットの毛などがアレルゲンになります。季節性は花粉で、花粉によって起こるアレルギー性鼻炎を「花粉症」と言います。花粉症は本州ではスギ花粉症が多いのに対して、北海道で最も多いのがシラカンバ花粉症で、5月の大型連休の前後になりやすい。加えてイネ科やヨモギの花粉症は夏・秋に多くみられます。
――診断と治療は。
 北海道で代表的なシラカンバ花粉症は天気のよい日に外出すると、くしゃみ、鼻水、鼻づまりがひどくなり、加えて目も痒くなって涙が止まらない。それから1ヵ月経つと治まります。シラカンバ花粉症では果物(リンゴやモモなど)に対する口腔アレルギー症候群を併発しやすいこともスギ花粉症とは異なる点です。
 治療では抗ヒスタミン剤による薬物療法で鼻水などの症状を抑えます。最近は舌下免疫療法といって、アレルゲンのエキスを舌下に載せることで抵抗性を高め体質改善をはかる治療も行われています。