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新・医療最前線

〈白内障、緑内障、加齢黄斑変性など眼科編〉

 人が日常生活で得る情報の7割は視覚である。今回の「医療ナビ」は、目の異常を取り上げ、眼科が扱う主だった病気について、専門医の意見を交え、わかりやすく解説する。


はじめに

 人のからだの症状を大まかに分類すると、27項目に分けられる(図)。
 今回はその中でG目の異常を取り上げ、白内障や緑内障など眼科が扱う主だった病気の症状と診断、治療について専門医の意見を参考に、わかりやすく紹介する。
 ただ病気の治療は専門医による診断が不可欠なのは言うまでもない。治療の目安として活用していただきたい。


糖尿病網膜症

 糖尿病によって血糖値が高い状態が続くと、網膜に栄養を送る血管が詰まる。その結果、網膜に出血や水漏れが起こるのが糖尿病網膜症である。糖尿病網膜症が進行する場合、適切なタイミングでレーザー治療を行う必要があるが、この時期には自覚症状がないのが怖いところだ。
 さらに進行して末期になって初めて視力が低下し、その場合には手術が必要になる。糖尿病網膜症を悪化させないためには、血糖値をコントロールすることと、症状がなくても眼科で定期的に検査を受けることが大切だ。


網膜剥離


▲人のからだの症状(図)
 目の奥側の壁には光を感じとる網膜があるが、この網膜が眼球の壁から剥がれてしまうのが網膜剥離。網膜に裂孔という裂け目ができることによって起こる網膜剥離は、裂孔原性網膜剥離と呼ばれ、急いで治療しなければならない。
 多くの場合、網膜剥離が起こる前に飛蚊症というゴミが飛んで見える症状が強くなる。網膜が剥がれる前であれば、外来でのレーザー治療で済むことも多いので、飛蚊症が急に増えた場合は早目に眼科を受診することを勧めたい。
 網膜剥離が起こると視野が欠けてきて、日に日に見えない範囲が広がっていく。この状態を放置すると失明してしまうため、剥がれた網膜を元の位置に戻す手術が必要になる。手術には、目の外から治療を行う強膜内陥術と目の中から治療を行う硝子体手術があり、病状に合わせて治療法を選択する。


網膜色素変性症

 網膜色素変性症は遺伝子異常により、網膜の中の視神経の蛋白質が異常をきたす病気。特定疾患(難病)に指定され、5000人に1人が罹患するといわれている。最初は暗い場所で見えにくくなり(夜盲)、進行するとドーナツ状に視野が欠けていき(輪状暗点)、失明する恐ろしい病気だ。
 治療は「アダプチノール」(ビタミンA)や「ニルバジピン」(カルシウム拮抗剤)による薬物治療を行うが「確立された治療法はなく、遺伝性なので家族歴のある方は要注意」と札幌医大の大黒浩教授。


飛蚊症

 飛蚊症は蚊が飛んでみえるもので、@「生理的」な飛蚊症とA「病的」な飛蚊症がある。生理的な飛蚊症は治療の必要はないが、病的な飛蚊症は網膜剥離の危険性があるので治療が必要だ。両者の違いだが、病的な飛蚊症の方は、フラッシュが飛ぶように光が走る症状が伴うことが多い(光視)。
 網膜に裂け目(網膜裂孔)があるが網膜が剥がれていない状態ではレーザーによる光凝固治療が行われ、網膜剥離がみられる場合には「網膜復位術」あるいは「硝子体手術」が行われる。「50歳以下では網膜復位術を、それ以上では硝子体手術が適用されることが多い」(札幌医大・大黒浩教授)


ドライアイ(乾き目)

 ドライアイには、シェーグレーン症候群のような涙腺の病気により涙が出なくて乾く@「涙液分泌型」と涙が出てもやたらと乾くA「蒸発亢進型」がある。テレビゲームやパソコン、空調の影響で最近注目されているのが、蒸発亢進型でまばたき(通常は2、3秒に1回)が少なくなることで起こる。
 治療は点眼薬による薬物治療(抗アレルギー剤や抗菌剤、ステロイド剤)が一般的だ。


翼状片

 翼状片は、黒目の角膜の上に、白目にある結膜という粘膜組織がのっかる状態をいう。日光に当たることで細胞増殖するのが原因とみられている。
 治療では翼状片切除術が行われるが、「矯正できない乱視(不正乱視)を防止するため、黒目の瞳孔に翼状片がかかる前に手術することが大切」(北大・石田晋教授)


白内障 加齢で蓄積した老廃物で水晶体が濁り、光が通りにくくなる


▲北海道大学大学院
医学研究科
眼科学分野
石田 晋教授
――白内障とはどういう病気ですか。
 白内障はカメラのレンズに相当する水晶体が濁って、光が通りにくくなり、視力が低下する病気です。
 たとえば寒い外気から暖かい室内に入ると眼鏡が曇って見えにくくなりますが、それとまったく同じ症状です。濁りの程度によって見え方は異なりますが、「湯気の中にいるみたい」といった感じが、一番わかりやすい表現だと思います。
――なぜ水晶体が濁るのですか。
 加齢によって眼内の細胞の老廃物がたまるのが原因です。細胞は代謝を行い、老廃物を排泄していますが、排泄物をうまく処理できなくなって蓄積していくわけです。濁りの成分は「AGE」(最終糖化産物)で、実は白色でなく茶色なんです。濁った水晶体は外側は白色ですが、内側は茶色でそれがAGEです。老化で皮膚のシミ(茶色)ができるのもAGEの蓄積が原因で、そう言えばわかりやすいでしょう。
――治療はどうするのですか。
 濁った水晶体を透明な人工の眼内レンズに取り替える手術を行います。手術法は年々進化していますが、1960年ころから白内障手術は普及していて、早期に確立した人工臓器による移植だということもできます。
 具体的には「超音波水晶体乳化吸引術」という、超音波で混濁した水晶体を破砕して、その小片を吸い取る手術で傷口が小さくて済みます。白内障手術はさらに進化してごく小さな傷口なので縫わなくても済む「極小切開創自己閉鎖術」にまで進んでいます。


緑内障 眼圧上昇による血流悪化で神経線維の障害が原因


▲札幌医科大学医学部
眼科学講座
大黒 浩教授
――緑内障の発症メカニズムは。
 眼圧が上昇すると眼全体が固くなり、神経に行くはずの血管の流れが悪くなり、栄養が減って網膜の神経線維の数が減り始めます。
 例えばカメラのフィルムの画素数ってありますね。神経線維はその画素数にあたります。その神経線維が集まる視神経の束は黄斑部の下にあって、眼球の下部にあります。網膜上の像(倒立像)と視覚(正立像)とでは上下が逆転するわけですから、眼球の下部が障害されると視野は逆に上から欠けていきます。緑内障で視野が上方から欠けていくのはそのためです。
――治療は。
 治療では、眼の中にたまっている房水の循環を変えるプロスタグランジンのような点眼薬をさします。この薬は毛様体から出る房水の量を減らしたり出口の線維柱帯を広げて房水を流れやすくする作用があります。
 それでも効かなければ手術になります。手術は@「流出路再建術」とA「線維柱帯切除術」(ろ過術)があり、@はレーザーや切開により線維柱帯の詰まったところを流れやすくする手術。Aはたまった房水を結膜という表面の皮の下に流す手術です。@は安全ですが、Aは失明などの合併症のリスクを伴うので、第一的には@を行います。最近はレーザー治療により、かなり薬が減らせることがわかっています。
 緑内障は神経線維が侵害される病気で一度減った神経は元には戻らず、完治することはできません。あくまでも進行を抑える治療になります。


加齢黄斑変性 見たいところが歪んで見えづらい片目ずつ確認することが大切


▲旭川医科大学医学部
眼科学講座
吉田 晃敏教授
――加齢黄斑変性とは、どんな病気ですか。
 目の奥に光を感じとる網膜という神経の膜があり、その真ん中の大事な場所は黄斑と呼ばれています。加齢黄斑変性はこの黄斑の病気で、大きく分けて滲出型と萎縮型の2種類がありますが、日本人に多い滲出型では黄斑に新生血管という正常とは違う血管が生えてきます。新生血管はもろくて破れやすいため、出血したり、水がたまってしまいます。
――症状は。
 ものが歪んで見えたり、文字が抜けて見えるという症状がでます。これらの症状は両目でものを見ていると案外気が付きませんので、片目ずつ確認することが重要です。
――診断は。
 まず目の奥を詳しく観察する眼底検査を行います。眼底検査後は数時間、車の運転を控えていただかなければなりませんので、ご自身の運転で眼科を受診される場合は注意が必要です。眼底検査の結果、加齢黄斑変性の疑いがある場合、新生血管を確認するために造影検査を行います。造影検査は造影剤という薬を使うため、高齢の方やアレルギーの心配のある方には行いづらい検査ですが、最近になって造影剤を使わなくても新生血管を確認できるOCTアンギオグラフィーという検査機器が登場してきました。
――治療は。
 滲出型加齢黄斑変性では病状に合わせて、目に打つ注射薬やレーザーを組み合わせて治療を行います。
 病状が進行してから治療を開始しても回復は難しいため、早期発見、早期治療が大切です。