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新・医療最前線

〈アトピー性皮膚炎、皮膚がん、乾癬など皮膚科編〉

 人は外界と接し、そこからいろいろな刺激を受けながら生きている。からだの中で直接外界と接し、バリア機能を担うのが皮膚である。
 今回の「医療ナビ」は、アトピー性皮膚炎や皮膚がん、乾癬など悩みの多い病気を取り上げ、皮膚科が扱う主だった病気について、専門医の意見を交え、わかりやすく解説する。


はじめに


▲人のからだの症状(図)
 人のからだの症状を大まかに分類すると、27項目に分けられる(図)。
 今回はその中で㉑発疹と㉒皮膚の異常を取り上げ、アトピー性皮膚炎や皮膚がん、乾癬など皮膚科が扱う主だった病気の症状と診断、治療について専門医の意見を参考に、わかりやすく紹介する。
 ただ病気の治療は専門医による診断が不可欠なのは言うまでもない。治療の目安として活用いただきたい。







尋常性疣贅(ウィルス性イボ)

 尋常性疣贅(ウィルス性イボ)は、ヒト乳頭腫ウィルス(パピローマウィルス)が皮膚に感染して、皮膚の細胞を増殖させて発症する。見た目はタコやウオノメに似ているが、表面がザラザラしていたり、手足では小さい黒い点がある。手足にできることが多く、足の裏にできると歩行時に痛みを伴う。治療は液体窒素による凍結療法などが行われる。



足白癬(水虫)

 足白癬(水虫)は皮膚の表面の成分を栄養にして増える真菌(カビ)が原因で、それを排除しようと炎症が起きるもの。足の指の間が多いが、足の裏にできる場合もある。症状はかゆみや赤み、足の裏の水ぶくれなど。爪に真菌が付着して治りずらいこともある。湿疹や乾癬などの症状に似ているため、診断では皮膚の表面を採取して顕微鏡で鑑別する(検鏡)。
 治療はリラナフタートのような抗真菌外用剤(塗り薬)がよく使われる。
「菌があって炎症が起きていない部分を含めて治療することが大切。指の間だけでなく、足首より下は全部、2ヵ月の期間、1日1回は薬を塗ることをお勧めしています」(旭川医科大学・本間大准教授)



鶏眼(ウオノメ)

 鶏眼(ウオノメ)は、足の裏など体重がかかる部分の皮膚の表面(角質)が局所的に厚くなり、歩行時に痛みを生じるもの。足の変形や歩き方のくせ、靴の履き方のくせなどが原因で起こる。
 治療は厚くなった角質を削り、取り除く治療(切削)。また尿素軟膏やサリチル酸軟膏による薬物治療が行われることもある。治療しても治らない場合には、根本原因である足の変形などを矯正する整形外科的な治療や靴のインソール(足底挿板)の付着などが行われる。



汗疱

 汗疱は皮膚の表面に汗がたまり、その後、指の側面などに1ミリ程度の小さい皮がむけてくる。ひどくなると手のひらが赤くなってカサカサになり、痒みが生じる(汗疱性湿疹)。治療はステロイド外用剤。金属のアレルギーが原因になっている場合もあるので、金属アレルギーの検査も行うことがあります」(札幌医科大学・宇原久教授)



肝斑(シミ)

 肝斑(かんぱん)は、頬や口のまわりに薄茶色のシミが出てくるもの。中高年の女性に多い。治療はハイドロキノンの外用やトラネキサム酸(トランサミン)の内服。



帯状疱疹

 帯状疱疹は、最初にからだの左右どちらかの片方に帯状の痛みが生じ、その2、3日後に虫にさされたような赤いブツブツと水泡が出てくる。
 帯状疱疹はおでこから側頭部や肋骨に沿って出る場合が多い。原因は、子どもの頃にかかった水疱瘡のウィルスが体内(神経の根元)に潜伏し、からだの免疫が低下したときに神経に沿って皮膚まで下りて来て皮膚炎を起こす。治療はウィルスの増殖を抑える薬物治療。「皮疹が治った後に残るしつこい神経痛が問題となる。神経痛を残さないためには、できるだけ早期(発症3日以内)に治療を始めることが大切です」(札幌医科大学・宇原久教授)



円形脱毛症

 円形脱毛症は、ある日突然、丸く毛が抜ける病気で、自分の免疫が毛を攻撃している疾患である。自然に治癒する場合もあるが、治療としてはステロイド外用剤や、症状がひどい場合には内服薬や注射薬を使う場合もある。
 また皮膚の表面をかぶれさせ、発毛を促進させる免疫療法(SADBE療法・保険外)も行われている。



アトピー性皮膚炎 フィラグリンの量が半減バリア機能が落ちて肌が乾燥


▲北海道大学
皮膚科
清水 宏教授
――なぜアトピー性皮膚炎になるのですか。
 皮膚は外界と体内の境にあって、サランラップのようにからだを覆い、水分が体外に出てしまうのを防ぐ働きがあります。アトピー性皮膚炎の原因の1つとして、このサランラップを構成する要素の一つである「フィラグリン」の量が遺伝子変異によって半分に減っていることが最近になってわかっています。アトピー性皮膚炎の原因はいろいろありますが、このフィラグリンの減少によるものが、全体の3割を占めてます。サランラップの役割(バリア機能)が弱くなって、水分がからだの外に出てしまい、肌が乾燥しやすくなるわけです。
――アトピー性皮膚炎の症状と治療は。
 初期症状では、左右対称に乾燥性のかゆい湿疹が出ます。湿疹は全身にできますが、できやすい箇所は顔と四肢(腕、下肢)です。
 標準的治療はステロイド軟膏による薬物治療で、湿疹がひどい箇所にステロイド軟膏を使って治します。ただ長期のステロイド外用は毛細血管が拡張するなどの副作用があるため、最近はプロトピックというステロイドが含まれていないが炎症をおさえる軟膏を積極的に使うよう、推奨しています。湿疹がひどい箇所にステロイド軟膏を塗り、ある程度症状が改善したらプロトピックを使ってよい状態を保つのが治療の基本です。ただプロトピックは、1日10グラムしか使えません。最近では中等度・重症度のアトピー性皮膚炎に効く生物学的製剤が開発されています。
 アトピー性皮膚炎は皮膚が乾燥しやすいので保湿剤を併用して皮膚の乾燥を防ぎます。


皮膚がん 黒い腫瘍のメラノーマと基底細胞がん赤い腫瘍の有棘細胞がん


▲札幌医科大学
皮膚科
宇原 久教授
――皮膚がんの種類は。
 皮膚がんには多くの種類があるが、患者さんに多い@基底細胞がん、A有棘細胞がん、Bメラノーマ(悪性黒色腫)、C乳房外パジェット病の4つについて説明します。
 基底細胞がんは、顔の中心部にできやすい黒い腫瘍です。特徴は、小さくても出血しやすく、かさぶたができて剥がすと血が出る。エナメルを塗ったようにつやつやと黒く光る腫瘍で、特に下まぶたから鼻にできやすい。
 診断は、ダーモスコピーを使い、最終的には皮膚生検で診断します。治療は手術です。基本的に転移しないので、基底細胞がんで亡くなる方は極めて稀です。ただ、顔の中心にできるので、切除した後に形を治す処置が必要になります。
 A有棘細胞がんは、長期間紫外線に当たることによりできます。高齢者の顔や耳にできやすい。最初は1センチ大までのカサカサした発赤(日光角化症)で、進行すると盛り上がってきます。
 治療は、早い段階だと塗り薬(イミキモド)や液体窒素による凍結を行います。日帰りで治せます。進行してしまうと手術になります。
 転移を起こした場合は、リンパ節郭清や抗がん剤治療、放射線治療を行います。
――メラノーマや乳房外パジェット病は。
 Bメラノーマは、日本人では、症例の半分は手足にできますが、残りの半分は体のどこにでもできます。
 多くは1センチ以上のサイズで、思春期後に新たにできた黒いシミで7ミリを超えた場合や爪の黒い線が太くなり、爪周囲の皮膚にもシミが出てきたときは皮膚科にかかってください。
 診断はダーモスコピー検査と皮膚生検。転移しやすいがんなのでリンパ節も検査します。
 治療は手術のほか、近年ではニボルマブやペンブロリズマブのような抗PD‐1抗体による免疫療法が登場し、治療効果が上がっています。鼻や脳など部位によっては粒子線治療やガンマーナイフなどの放射線治療も行わます。
 C乳房外パジェット病は、陰嚢や陰茎、膣周辺の皮膚にできます。陰部に形の変わらない平らな発赤が何年もある場合は皮膚科を受診してください。
 診断は皮膚生検で、治療は手術です。


乾癬 頭や肘膝などを中心にカサカサした赤い皮疹ができる


▲旭川医科大学
皮膚科
本間 大准教授
――乾癬はどういう病気なのですか。
 乾癬では、特に頭、肘膝、腰などを中心にカサカサした赤い皮疹がみられます。これらの皮疹は一定のかゆみを伴うことが少なくありません。
――治療は。
 皮膚病の治療でよく使われる塗り薬のほか、免疫抑制剤などの飲み薬、生物学的製剤の注射薬があります。薬のほかには紫外線を浴びる治療があります。この紫外線は太陽の光と違い、日焼けを起こす紫外線は除いて治療効果がある紫外線のみを使用しているため、皮膚の障害は少ない。以前は、紫外線を当てる前に薬風呂に入ったり、薬を塗る必要がありましたが、新しい紫外線治療ではその必要がないため、非常に簡便です。
 治療法の選択については、基本的に重症度や現在行われている治療の効果をみて、全身的な治療を行うかどうかを決定します。ただし、特に衣服で隠れない部位に皮疹があり、日常生活の上で支障がある場合にはより効果が高い治療法を用いることがあります。最近、効果の高い生物学的製剤が乾癬に対して使用できるようになってきました。これらの薬剤は現在ある乾癬の皮疹が75〜90%程度改善すること(ほぼ皮疹がない状態)を目標にできる治療法です。
 この生物学的製剤は基本的に注射で使用します。点滴のほか、皮下注射の薬があり、2週間に1回から3ヵ月に1回の間隔で定期的に使用します。結核にかかっている場合やB型肝炎がある場合には、使用できないことがありますが、定期的に]線の検査や血液検査を行うことで大きな副作用が比較的少ないことがわかっています。