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ヘルスケア

〈食事からエクササイズまで 肝硬変、胃がん、大腸がんなど 消化器科編〉

 本誌連載の「医療ナビ」が、今月号から新連載「ヘルスケア『大百科』」としてスタートする。
「予防に勝る治療なし」の観点からヘルシーな食事やエクササイズの情報を加え、1回目は私たちの飲食に関わる胃腸や肝臓の主だった病気について、専門医の意見を交え、わかりやすく紹介する。


肝硬変 「ウィルス」「アルコール」「肥満」が3大原因

 肝硬変や肝炎、肝がんのような肝臓病は@ウィルス、Aアルコール、B肥満が原因で発症する。これを「肝臓病の3大原因」と呼ばれている。
 @ウィルスは主にB型肝炎ウィルスとC型肝炎ウィルス。Aアルコールは、肝臓でアルコールが代謝されてできる毒性の強いアセトアルデヒドによって障害が強まり、肝臓の線維化が起きて発症する。
 肝硬変にならないで済む1日の飲酒量の上限は日本人男性の場合、純アルコール1日40g。一方女性の場合は1日20g程度が目安となる(図1・参照)。
 B肥満は、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)と呼ばれ、近年増加傾向にある。


肝硬変 食事&運動 メタボ改善の「鶏肉」活性酵素抑制の「野菜スープ」



 ウィルスやアルコールが原因でない「NASH」を悪化される3大要因は@からだの糖化とメタボ体質からくる「脂肪の蓄積」、A「活性酸素」による酸化、B肝臓への「鉄の蓄積」である。これらは食事療法で改善することができる。
 @メタボ体質の改善には、血糖値の急激な上昇を防ぐグリセミックインデックス(GI値)の低い食品がよいとされている。GI値は食品を摂取した際に血糖値が上昇する速度のこと。それぞれGI値が高い食品と低い食品の代表的なものを図にした(図3・参照)。
 A「活性酸素の抑制」には、ポリフェノールなど植物がつくる強力な抗酸化物質であるファイトケミカルの摂取が効果的だといわれている。そのためには野菜スープ(ファイトケミカルスープ)がおススメ。その作り方を紹介した(図2・参照)。
 B「鉄の蓄積」については、鉄分の摂り過ぎに要注意だ。鉄分が多いレバーや赤身肉は鶏肉に換えるとよい。最近肝硬変の治療として、血を抜き鉄分を減らす「瀉血」も行われている。また鉄由来の酸化ストレスを軽減する治療薬「プラセンタ」は瀉血と同じ効果が期待されている。
 従来は、運動は肝障害を悪化させると考えられ、安静の必要性が説かれていたが、アンモニアの処理を行う筋肉は、「第二の肝臓」だという考えから、最近では酸素を消費しながら行う適度な運動が推奨されている。肝硬変の運動療法の一例を紹介した(図4・参照)。
 ただし、腹水貯留など症状によっては運動療法が適さない場合もあるので、専門医と相談しながら行うことが大切だ。



胃がん ピロリ菌と胃酸の闘いが原因

 胃の粘膜に感染したピロリ菌は、同じく胃の粘膜にある胃酸から身を守るために「ウレアーゼ」という酵素を分泌して周囲にある胃酸(酸性)を中和しようとする。
 この時に生成されるアンモニアが胃の粘膜に炎症を起こし、ダメージを与える。炎症が続くと胃の粘膜のDNAに傷がつき、正常なかたちに再生しなくなり、胃がんが発症することになる(図5・参照)。



大腸がん 7割が肛門に近い腸に発症

 大腸がんは、年々増加傾向にあり、女性では2003年以降、胃がんを抜いてがん死亡数の第1位になった(男性は3位)。食習慣の欧米化が原因とされている。
 大腸は「結腸」(直腸より上の部分)と「直腸」(肛門につながるまっすぐになった部分)に大きく分けられる。
 大腸のなかで最もがんができやすいのが「直腸」で、全体のおよそ4割を占める。次にがんができやすいのが「S状結腸」で、全体のおよそ3割。直腸もS状結腸も肛門に近く、腸のなかでも肛門に近い部位のがんが全体のおよそ7割を占めている(図6・参照)。
 ちなみに腸には、大腸と小腸があり、小腸を取り囲むかたちで大腸がある。小腸上部の十二指腸は、人の指を12本並べた大きさであることから、このように名付けられた。



肝硬変 お酒を飲まない人も注意したい「NASH」


▲北海道大学医学研究院
消化器内科学教室
坂本 直哉教授
――肝硬変の原因は。
 肝硬変の原因には、@ウィルス性肝炎、Aアルコール性肝炎、B非アルコール性脂肪肝炎(NASH)がありますが、ウィルス性肝炎が減る一方、B非アルコール性脂肪肝炎の方は増加傾向にあります。
 NASHは、過食や運動不足が原因なので、生活習慣の改善が第一。食事療法と運動療法が中心になります。
 また肝硬変は肝臓がんの原因になります。
――肝硬変の症状は。
「むくみやすくなる」、「からだがだるくなる」、「黄疸ができる」、「腹水がたまる」のが症状ですが、症状が出たときには進行している場合が多く、定期的な検診をお勧めします。
――新しい治療法は。
 北海道の場合、@ウィルス性肝炎の半分がB型肝炎なのが特徴。
 B型肝炎には「核酸アナログ薬」が使われ、副作用はほとんどありません。C型肝炎では、「直接型ウィルス薬」(DAA)が使われ、副作用がまったくなく、飲み薬なので治療が楽です。



胃がん 原因の98%はピロリ菌だが未感染の発症も


▲札幌医科大学
消化器内科学講座
仲瀬 裕志教授
――ピロリ菌の除菌は。
 胃がんは日本人の場合、その98%がピロリ菌が関与しています。
 酸を抑える「プロトンポンプ阻害薬」と抗菌薬を併用し、飲み薬なので簡便に除菌できます。
――診断と治療は。
 一番多いのは内視鏡検査です。内視鏡で腫瘍の有無と腫瘍が見つかった場合の進行度を調べます。腫瘍の有無については内視鏡で組織を採取して調べます(生検)。進行度については腫瘍が胃の粘膜の下に入っていく進み方(浸潤の程度)を診ます。
 胃がんの5年生存率は、T期が97・3%、U期が65・7%、V期が47・2%、W期が7・3%。がんが胃の粘膜に限局しているT期の早期では内視鏡手術で済み、早期発見が大切。
 注意したいのは、ピロリ菌に感染しなくてもがんになる場合があること。家族歴のある方は内視鏡による定期検診をお勧めします。塩分と喫煙を控え、野菜を多く摂ることをお勧めします。



大腸がん 自覚症状がないので40歳以上は定期検診を


▲旭川医科大学
内科学講座 消化器・
血液腫瘍制御内科学分野
奥村 利勝教授
――大腸がんの特徴は何ですか。
 まず糖尿病の人は、そうでない人と比べて1・5倍ちかく大腸がんになりやすく、インスリン自体が大腸がんを発症させる危険因子ではないかと言われています。
 大腸がんはかなり病状が進行しないと自覚症状が出ません。
 症状としては便の中に少量の血液が混じること(血便)がありますが、痛くも痒くもないので気づかない。検診などでの便潜血検査で陽性になって、大腸の内視鏡検査でわかることが多い。
 大腸は食べ物の通り道として拡張するので、がんが大きくなって通過障害(腸閉塞)にならなければ、自覚症状が出ないんです。
 40歳以上の方は2年に1度の定期的な検診をお勧めします。
――診断は。
 便潜血検査が陽性になっても、それだけで大腸がんなのか、それとも痔なのかの鑑別はつきません。肛門から内視鏡カメラを挿入して大腸の中をくまなく診る大腸の内視鏡検査で鑑別します。
――治療は。
 大腸がんが見つかった場合には、進行の程度によって@内視鏡で腫瘍を切除する内科的な治療「内視鏡的粘膜下層剥離術」(ESD)、A外科的な治療(開腹手術や腹腔鏡手術)、B抗がん剤による化学療法を行うことになります。
 大まかに説明すると@は腫瘍が粘膜内にとどまっている場合(ステージ0)に行われ、Aは粘膜下層の表層以深にまで浸潤している場合(ステージT〜V)に、Bは手術後の再発予防や他の臓器に転移している場合(ステージW)に行われます。



肝硬変 シジミが予防に良いのウソ?ホント?

 昔から肝硬変の予防にシジミが良いとされてきた。シジミに含まれるオルニチンは、肝臓のアンモニアの代謝に関わり、解毒作用を助ける働きがあるからだ。
 だが最近は、シジミは鉄分が多く含まれ、肝臓に悪影響があることがわかってきた。シジミ汁は汁だけ飲み、鉄分豊富な身は食べない方がよさそうだ。



コーヒーで予防?

 コーヒーには「ポリフェノール」の一種である抗酸化物質の「クロロゲン酸」が豊富に含まれている。クロロゲン酸は血糖値を改善するほか、体内の炎症を抑える作用がある。最近肝臓がんや大腸がんの予防によいといわれるようになった。