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ヘルスケア

〈骨粗しょう症、脊柱管狭窄症、変形性関節症などで
 困らないためのビフォー&アフター 整形外科編〉


「ヘルスケア大百科」は病気にならないための健康情報に加え、診療科ごとに顕著な病気を専門医に解説してもらうシリーズ。5回目は、からだを支えその動作を担う骨と筋肉の主だった病気について、専門医の意見を交え、わかりやすく紹介する。


しくみ1(骨&筋肉) からだを支え、動かす「骨」と「筋肉」




 整形外科の病気は、難解な専門用語が使われ、理解が難しいとされている。そのため、病気や治療を理解する上で「骨と筋肉のしくみ」の予備知識が必要不可欠だ。ここでは、骨と筋肉の全体図(図1〜3)と主だった部位である股関節と膝関節、椎間板の拡大図(図4〜6)を示した。
 成人の骨格は約200個の骨でできており、約500個の筋肉がそれらの骨を包んでいる。
 骨と骨は互いに結合して骨格を形成しているが、その結合(広義の関節)の仕方により、運動の範囲と度合が異なってくる。結合には不動性と可動性があり、可動性の結合を狭義の関節という。
 一方、骨格に付いていて動作に関係する筋肉を「骨格筋」という。
 骨格筋中央の膨らんだ赤い部分が「筋膜」で、左右の細く白い部分が「腱」。骨格筋は、腱によって関節をはさんで位置する2つの骨に付着、関節の運動に作用している。


しくみ2(股関節) 骨頭(ボール)と臼蓋(受け皿)の組み合わせ

 股関節は、「球関節」(ボールと受け皿の関節)と呼ばれるように、大腿骨(太ももの骨)の丸い骨頭(ボール)が骨盤の臼蓋(受け皿)に組み合わさってできている(図4参照)。
 ボールと受け皿の表面は軟骨で覆われ、股関節のまわりは筋肉や腱に囲まれて補強され、股関節を支え安定した動きができるようになっている。



しくみ3(膝関節) 3つの骨の軟骨が関節に加わる衝撃を吸収

 膝関節は@「大腿骨」(太ももの骨)とA「脛骨」(すねの骨)、そして大腿四頭筋(太ももの筋肉)と膝蓋腱に支えられたB「膝蓋骨」(皿)の3つの骨が組み合わさってできている。脛骨の上を大腿骨が前後にすべり転がることによって膝の曲げ伸ばしが可能になる(図5参照)。
 この3つの骨の表面は、弾力のある柔らかな「軟骨」で覆われ、クッションの役目を担っている。また大腿骨と脛骨の間にある「半月板」にも、関節に加わる衝撃を吸収する役割がある。
 このように私たちが走ったり、ジャンプをしたときに骨同士がぐらぐらしないように筋肉や腱で支えているのだ。


椎間板ヘルニア 主な症状は腰は「足の痺れ」首は「手の痺れ」

 椎間板ヘルニアは、骨と骨の間にあってクッションの役目を果たす「椎間板」という軟骨が加齢によって弱くなり、飛び出して神経を刺激する病気(図6参照)。
 腰と首に発症し、腰の「腰部椎間板ヘルニア」の症状は足の痺れ(座骨神経痛)が特徴。一方、首の「頸部椎間板ヘルニア」は手の痺れが症状。片手が痺れ、首を反らすとびりっと痺れることが多い。
 治療は非ステロイド消炎鎮痛薬(第一選択)と「プレガバリン」による薬物療法、そしてストレッチを中心とした運動療法を行い、効果がみられないときは、手術を行う。
 手術では、腰部は最近、より低侵襲な内視鏡下椎間板摘出術「MED」が行われている。一方の頸部は、「前方固定術」やより低侵襲の「部分椎弓切除および椎間板切除術」(後方)を行う。



関節リウマチ  自己免疫異常の誤認識で関節を攻撃、破壊

 関節リウマチは、自己免疫の異常により、免疫機能を維持するための細胞が体内の関節組織を異物と誤認識して攻撃し、関節が破壊されていく病気。
 症状は関節の腫れ、痛み、変形など。
 治療は生物学的製剤やステロイド剤による薬物治療。症状が抑えられない場合には手術を行う。
 手術は発症部位や程度によって「関節の滑膜切除術」や「関節形成術」、「人工関節置換術」、「関節固定術」などが行われている。



座骨神経痛 主に椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症が原因で発症

 座骨神経は腰から足の方へ向かう神経で、座骨神経痛は尻から脛にかけて痛みを生じ、急性の場合には「魔女の一撃」と呼ばれる激痛が走る。
 椎間板ヘルニアおよび脊柱管狭窄症の2つの病気が原因で起こる場合がほとんどのため、診断では原因がそのどちらかかを鑑別する。まれに卵巣嚢腫や子宮筋腫のような婦人科疾患が原因の場合も。
 治療は消炎鎮痛薬やプレガバリンによる薬物治療がメーンとなり、椎間板ヘルニアなどの原因疾患が特定されれば、その治療を行う。



骨粗しょう症(食事&運動) カルシウム、ビタミンD、 ビタミンKが三本柱


 骨の形成に役立つ栄養素は@カルシウム、AビタミンD、BビタミンK。これらが多く含まれる食材を紹介する(図7参照)。
 一方、骨を強くする運動は、無理なく続けることが大切で、家の中でも手軽に行える運動を紹介する(図8参照)。


骨粗しょう症 自覚症状がなく骨折がこわい骨粗しょう症


▲北海道大学大学院
医学研究院
整形外科学教室
岩崎 倫政教授
――骨粗しょう症とは。
 骨の量が減り、骨の質がもろくなってしまうという病気です。骨の変形や痛み、骨折を引き起こします。
 主な原因は、ホルモンの影響や高齢に伴う運動負荷の減退です。
――診断や治療法は。
 病態に合った内服薬や注射などで治療を進めます。かつては骨の量を維持する作用しかなかったんですが、数年前から骨の量を増やし、元に戻すくらいの効果のある新薬も出てきています。
 骨粗しょう症で一番こわいのは骨折です。ちょっとした転倒や日常動作で骨折し、そこから寝たきりになってしまう人も少なくありません。転倒防止のための筋力トレーニングが必要です。また骨粗しょう症による骨折では、骨折を繰り返す場合(骨折の連鎖)があるので、骨折と同時に骨粗しょう症の治療を行うことが大切です。
 骨粗しょう症の多くは自覚症状がありません。気になる人は骨粗しょう症検診を受けると良いでしょう。


脊柱管狭窄症 100メートル歩いて立ち止まる前かがみで楽になる 「脊柱管狭窄症」


▲札幌医科大学
整形外科講座
山下 敏彦教授
――脊柱管狭窄症とは。
 背骨の中の脊柱管が加齢によって狭くなり、その中を通る神経(馬尾)がしめつけられるのが、脊柱管狭窄症です。
――症状は。
 頸部(首)と腰部に発症し、その割合は3対7。頸部脊柱管狭窄症は頚椎症とも呼ばれ、主に手の痺れ、進行すると足の痺れもあります。
 一方の腰部脊柱管狭窄症は足の痛みや痺れ、冷感があり、「間欠跛行」と言って、歩いているうちに足が痺れて立ち止まってしまう。そして前かがみになると少し楽になる、というのが特徴です。
――治療は。
「プロスタグランジン」製剤や「プレガバリン」の薬物治療のほか、手術もあります。
 頸部では「椎弓形成術」という手術が行われ、最近では筋肉を温存する低侵襲の手術も行われています。
 腰部では、「椎弓切除術」が主流でしたが、最近では内視鏡で治療する「MED」や鏡視下後方除圧術「ME‐MILD」(札幌医大)も行われています。


変形性関節症 軟骨が摩耗して神経を刺激するのが 「変形性関節症」


▲旭川医科大学
整形外科講座
伊藤 浩教授
――なぜ、痛みが生じるのでしょうか。
 軟骨が摩耗すると関節の中の表面にある滑膜が炎症し、滑膜には神経が通っていて、神経を刺激するわけです。
 初期症状としては、動き始めのときに痛みが生じ、その後痛みが和らぐ特徴があります。進行すると歩くといつも痛くなり、進行すると夜間じっとしてても痛くなります。
――治療法は。
 消炎鎮痛剤で痛みを緩和させる薬物療法と手術があります。  手術は骨を切ってずらして関節を良好な位置に保つ「骨切り術」と関節自体を人工物に取り換える「人工関節」があります。
 人工関節は関節の面(摺動面)の摩耗が少なくなり、10年前と比べ十数年長持ちすることが期待されています。
 症状が進行すると人工関節が必要になりますが、初期の段階で骨切り術を行えば痛みのない快適な生活を送れて、生涯人工関節の必要がなくなるので、骨切り術をお勧めします。


ロコモ 6月5日は「ロコモ予防の日」

 ロコモティブシンドローム(運動器症候群)は2007年に日本整形外科学会が提案した概念で、運動器の障害によって移動機能(歩行や立ち座りなど)の低下をきたした状態と定義されている。
 健康寿命の観点からも注目され、毎年6月5日の「ロコモ予防の日」には、全国各地でその啓発活動や講演会が行われている。



ペインクリニック ペインクリニックはどういう時に利用する?

 ペインクリニックは「痛み」に関する診断・治療を行う専門科。主に麻酔の専門医が担当している。痛みを伝える知覚神経や交感神経に局所麻酔する「神経ブロック」が特徴だ。
 原因がはっきりしない慢性の痛みや手術をした後、なかなか痛みがとれない場合には当面の痛みを抑えるために有効だ。


骨粗しょう症 シイタケは「生」より「干し」の方が予防になる?

 カルシウムの吸収を高めるビタミンDが多く含まれているシイタケだが、「生」シイタケと比べ「干し」シイタケの方が約8倍のビタミンDが含まれている。ただし市販品の中には人工の光で乾燥させたものも少なくなく、ビタミンDが多く含まれていない場合もあるので、生シイタケを自分で干して使いたい。