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〈国民の4人に1人が糖尿病とその予備軍
 合併症で困らないためのビフォー&アフター 糖尿病編〉


「ヘルスケア大百科」は病気にならないための健康情報に加え、診療科ごとに顕著な病気を専門医に解説してもらうシリーズ。6回目は国民の4人に1人が罹患者もしくはその予備軍で、国民病と言われる糖尿病について専門医の意見を交え、わかりやすく紹介する。


しくみ 血糖が「太い血管」と「細い血管」を障害して合併症が起きる


 糖尿病は膵臓でつくられるインスリンという血糖を下げるホルモンの働きが低下するため、体内に取り込まれる栄養素がうまく利用されずに、血液中のブドウ糖(血糖)が多くなる病気である(図1参照)。
 幼児期から青年期にかけて急に発病することが多い「1型糖尿病」(インスリン依存型)と、無症状の時期が長く徐々に血糖が上がる「2型糖尿病」(インスリン非依存型)に分けられる。
 その糖尿病で気をつけたいのが合併症だ。
 合併症には@太い血管が障害される「大血管障害」と、A細い血管が障害される「細小血管障害」がある。@の大血管障害には(ア)脳血管障害(脳梗塞など)、(イ)虚血性心疾患(心筋梗塞など)、(ウ)閉塞性動脈硬化症(下肢の壊疽)があり、Aの細小血管障害には(ア)網膜症、(イ)腎症、(ウ)神経障害がある。
 とくに細小血管障害は、糖尿病特有の病気(糖尿病がないと発症しない)であることから、糖尿病の「三大合併症」と呼ばれている(図2参照)。
 そこで糖尿病の治療では、血糖をコントロールしながら、これらの合併症を予防することがきわめて大切だ。


「血糖値」&「HbA1c」 血糖の変動の平均値で診る 「HbA1c」

 糖尿病の診断に欠かせないのが「血糖値」と「HbA1c」(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)の値だ。
 なぜ検査には、この2つの値が必要なのか。またその違いは何か。
 糖尿病の診断基準には、早朝空腹時血糖値126mg/、随時血糖値200mg/、HbA1cが6・5%以上だと両者が使用される(5・7%以上で境界型の可能性)。
 血糖値とは、血液内のブドウ糖の濃度で、食後は高くなり、絶食時間が長いと低くなる。
 一方のHbA1cは、赤血球の中で体内に酸素を運ぶヘモグロビンと血液中のブドウ糖が結合して長時間で変化したもので、血糖値が高いほど形成されやすく、血液中にどれだけのHbA1cがあるかをパーセンテージで表す。
 この2つの値の違いだが、血糖値が食事の度に常に変化し不安定なのに対してHbA1cは濃度が安定していて普段の血糖コントロールの状況を判断する目安になりやすい。ヘモグロビンの寿命は長いためHbA1cの値を調べることで過去1〜2ヵ月の血糖の平均がわかるのだ(図3参照)。
 実際の糖尿病の治療において、このHbA1cの値を下げることで三大合併症といわれる網膜症、神経障害、腎症といった細小血管障害の発症を予防できることがわかっている。
 一方、大血管障害(脳梗塞や心筋梗塞など)については、コレステロールや中性脂肪、血圧の方がより重要になり、頸動脈エコーやCAVI/ABI、心電図などの動脈硬化検査を定期的に行ってその変化を評価することになる。




新薬 低血糖を起こさずに高血糖を改善、体重減少作用も

 腎臓の糸球体でろ過されたブドウ糖は再吸収されて血液に戻るが、その再吸収の役割を担うのが「SGLT2」である。その「SGLT2」の働きを阻害するのが「SGLT2阻害薬」で、1日70gほどの糖を再吸収せずに尿に排出する。単独使用では低血糖が起きないうえ、体重も平均3〜4s減少し、中性脂肪や血圧、尿酸も改善する効果がある。
「GLP‐1受容体作動薬」も低血糖を起こしにくく、しかもインスリンの次に血糖を下げる効果がある。こちらも低血糖を起こさずに高血糖を改善し、体重減少作用がある。
 主だった糖尿病治療薬を一覧で示した(図4参照)。参考にしてもらいたい。


食事 色の濃い野菜やくだものがおススメ

 糖尿病予防の食事として野菜やくだものをバランスよく摂ることが大切で、日本人の場合1日当たり野菜350g以上、くだもの200g以上が推奨されている。
「みかんやブロッコリーのような色の濃い野菜やくだものがよい。野菜やくだものに含まれる繊維質は糖や脂の吸収をゆっくりとさせるので、ジュースよりスムージーのような繊維質を残した飲み物がおススメです」と旭川医科大学の太田嗣人教授。
 ここでは手軽なグリーンスムージ―の作り方を紹介する(図5参照)


運動 高齢者が冬、室内でできるレジスタンス運動(筋トレ)

 糖尿病予防にはウォーキングやジョギングのような有酸素運動がよい。
「筋肉を鍛えると血糖値が上がりにくい体質になる」(前出・太田教授)
 ここでは高齢者が冬でも手軽に室内でできるレジスタンス運動(筋トレ)を紹介する(図6参照)


新薬 国際的に有効性が認められた「SGLT2阻害薬」と「GLP‐1受容体作動薬」


▲北海道大学大学院
糖尿病・肥満病態治療学分野
三好 秀明特任教授
――新薬が注目されています。
 この2剤は低血糖を来さずに高血糖を改善し、体重減少作用もあることから使用者が急増しています。最近、心、腎、肝、膵などの全身臓器にとても良い効果があることも科学的に証明されたことで、国際的治療ガイドラインで、心筋梗塞や狭心症、心不全、腎機能障害などの既往のある方に対して、とくに推奨されるようになりました。これら薬剤の有効性をうまく活かすために、安全に上手に使用することが重要です。
 北海道大学病院は北海道唯一の肥満外科手術施設に認定されました。薬物治療と比べ健康寿命やQOLを改善することが知られており、今後は日本でも海外同様に標準治療となっていくと考えられます。
――新しい機器も登場してますね。
 500円玉サイズの血糖センサーが発売され、14日間、24時間いつでも血糖状況を把握できるようになり、患者さんの血糖管理とQOLの改善に大きく寄与しています。


合併症1大血管障害 糖尿病予備軍は糖尿病でなくても動脈硬化が進む「境界型」


▲札幌医科大学
循環器・腎臓・代謝
内分泌内科学講座
三木 隆幸准教授
――糖尿病予備軍とは。
 糖尿病ではないが、正常とは言えない状態が「境界型」で、大血管障害はこの「境界型」から進行しています。
「境界型」は、インスリンの効きが悪くなるため、インスリンを多量に分泌して高インスリンの状態になり、食後に高血糖になる状況。それが改善されないと、インスリンの分泌が悪くなり、糖尿病になります。その時期に食事療法、運動療法を行い、改善されない場合には、薬物療法で改善することが大切です。
――大血管障害の予防のために必要なことは。
 大血管障害の原因は動脈硬化なので、血糖のコントロールと同時に@血圧を下げる、Aコレステロールの管理、B禁煙の3つが非常に大切です。またSGLT2阻害薬が心不全の予防に、GLP‐1受容体作動薬が動脈硬化予防に有効です。
 心不全には@動脈硬化が原因の他に、A心臓自体の筋肉が厚く硬くなるものがあります。動脈硬化がなくても心不全になることに注意が必要です。


合併症2細小血管障害 血糖が細い血管を障害して「神経障害」「網膜症」「腎症」を発症


▲旭川医科大学
内科学講座病態
代謝内科学分野
太田 嗣人教授
――細小血管障害とは。
 細小血管障害は、細い血管が高血糖で障害されるものです。からだの中で細い血管が集まっているところは、@神経、A目の網膜、B腎臓で、それぞれ頭文字をとって「シ・メ・ジ」と覚えるとよいでしょう。
――高齢者が気を付けることは。
 高齢者は腎臓の機能が低下しがちなので、それに高血糖が加わると腎機能の障害が進みやすい。高齢の糖尿病が増えて、認知症で糖尿病の方も増えています。
 神経障害が進むと、「痛いときに痛いと感じない」、「熱いものに熱いと感じない」といった症状が出ます。これから寒い時期になりますが、局所を温めるもの(湯たんぽなど)を使うと、神経障害の場合、熱いのが感じられないので低温やけどになって足の壊疽につながりやすい。放っておくと足の切断や敗血症になるので、注意が必要です。
 足先は普段見落としがちなので入浴する際に、観察することが大切です。


合併症 歯周病、骨粗しょう症、認知症、がんに注意

 糖尿病のその他の合併症で注目されるのは@歯周病、A骨粗しょう症、B認知症、Cがんの4つ。
 歯周病になりやすく、骨粗しょう症は健常者と比べて「1型糖尿病」で6倍、「2型糖尿病」で2倍なりやすい。認知症は2倍の確率で発症、膵臓・肝臓・大腸がんの発症リスクも高い(2・5倍)。


糖尿病予防 エビ・カニに含まれる「アスタキサンチン」に期待

 エビやカニなどに含まれる色素の「アスタキサンチン」は抗酸化作用があり、糖尿病予防によいとされている。
 その抗酸化作用は、ビタミンEの550〜1000倍、野菜に含まれるβーカロテンの40倍、コエンザイムQ10の800倍とされ、健康食品などの分野で研究が進められている。


糖尿病予防 糖の吸収を抑える菊芋「イヌリン」

 食物繊維は糖を包み込み、吸収速度を遅くする働きがあるが、糖の吸収を抑える作用として知られるのが菊芋などに多く含まれる「イヌリン」だ。また納豆に含まれる「ナットウキナーゼ」も同様の作用があると言われている。
 糖尿病予防のサプリとしても販売されているので試してみては。